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ボクには名前があるらしい?
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夏のそよかぜさん
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葉山を抜けて、有料道路に入る頃には、さらに重たい雲が立ちこめて今にも雨がふるのでは?と思うほど、あたりは薄暗くなった。 ボクは、あっちにふらふら、こっちにふらふら状態で、この箱の中がすごく広い。 --ボクはどうなるの?ママのルビーはどこにいるの?ウルフはどこにいるの?--- さっきまで、お腹がグーグーなっていたのに、もうそんなこと忘れちゃったヨ。 とてもコワイヨ〜ぉ。
なんだかささやく声が聞こえてくる。ずっと聞こえていたかもしれない声が聞こえてきた。 「アルクール アルクール あなたの名前はアルクールでちゅョ。可愛い息子 私がアルクールのママでちゅョ。パパとママを覚えてね」 いつの間にか、赤ちゃん言葉になっている。
ボクがまたふらふらとしていると、やさしいママなの?その手がボクの体を押さえているらしい。それでもカーブを曲がるたびに、ボクはふらふらしていた。 「アルクールを箱から出して抱いてやった方がいいよ」 運転しているパパが言った。 ボクは箱の中から持ち上げられて、ママの胸に抱かれた。 ママの「チックタック!チックタック!」という音が聞こえる。 お腹にいたときのなつかしい鼓動なのか?次第にアルクールは落ち着いてきた。
いつの間にか、フロントガラスには、ボツボツと大粒の雨が当たりガラスを濡らして行く。「アルクール アルクール あなたの名前はアルクールでちゅョ。可愛い息子。私がアルクールのママでちゅョ」優しい声がささやいている。 とても心地よく響いてきた。アルクールは緊張疲れなのか上瞼が重たいらしく、まどろみ始めた。 「アルクール アルクール アルクール」。。。。。。。 ボクの名前は「アルクール」らしい、、、。
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2006年5月26日(金)
No.10
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「鈴木さん、朝からこの子犬には、まだご飯あげていないんです。 これからクルマに揺られると食べたご飯を吐いちゃったりするから、帰ったらすぐに食べさせてくださいね。」 そう言いながら、萌子さんは、この位の量のドライフードをお湯でふやかして、粉ミルクをスプーン一杯加えて、やわらかくツブして1日に3回食べさせるように、、、と細かく説明していた。 それから、萌子さんの勧めるもの、フード、サークル、ベット、ご飯の器を購入した。ベットには、まわりにふかふかの羊さんの毛のようなモコモコが付いていたし、 ご飯のステンレスの器の底には、ワンワンの足型がデザインされいる。 そして、30枚入りのオシッコシートも加えながら、「オシッコ」と「うんち」を小さな子犬に、教える方法をアドバイスしながら、サークルの中にあるオシッコシートの上にあった刻んだ新聞を一掴み取り上げ、それをビニール袋に入れながら、 「これ、持っていって自宅についてから、まずオシッコシートにこのオシッコの臭いがついている刻んだ新聞を置いてください。そして、その上にこの子犬を立たせれば、オシッコの臭いをかぎながら、オシッコしますから大丈夫よ」 なんと頼もしい助言。 今や、刻んだ新聞が入っているビニール袋が、とっても大切になったように二人は思った。 さらに、おもちゃのボールやぬいぐるみの羊さん、くまさんを勧められるままに購入しクルマのトランクに詰め込んで行った。 そして、すべてお会計を済ませたとき、スタッフの亜紀ちゃんが20センチ四方の箱を持ってきた。そのフタの開いている箱のまわりには、薄いブルーのリボンが結ばれている。その箱を受け取った萌子さんは、その箱の中に小さく折り曲げたオシッコシートが入っていることを確認してから、その中にボクは入れられた。 萌子さんは、そのフタの開いている箱とその中入れられたボクを、鈴木さんに渡しながら言った。 「今日から鈴木家の子供ですね」 「ええ、可愛い赤ちゃん、大切に育てますね。いろいろありがとうございます」 そういいながら、箱を大事に抱えながらクルマに乗り込んだ。リボンが風になびいてクルマのドアに挟まりそうだった。 「また近くに来たら、いつでも寄って下さいね」萌子さんの声が響いた。 窓を開けて手を振りながら、クルマはゆっくり走り出した。 いつの間にか、さっきまで晴れていた空も少しづつ雲が多くなり、赤いクルマは鎌倉山を離れ、くねくねと続く下り坂を折り曲がりながら、湘南の海の方へ走っていった。
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2006年5月26日(金)
No.9
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お昼を少し過ぎた頃、真っ赤な車がお店の前に止まった。 その音が聞こえたのか、萌子さんがご夫妻に声をかける。 「鈴木さん、いらっしゃい。一週間でまた少し大きくなってますよ。ほら見て?」 サークルの所にやって来て、やっとお腹の空いたのを忘れかけて眠くなったボクを取り上げて、女性が差し出した手のひらに乗っけた。
「あら?やっぱり少し大きくなったみたいね。」と彼の方に相づちを求めた。 彼の人差し指が、子犬のほっぺを撫でている。 「やっぱり、この子で良かったわ。あの時、別れ際に私の指をペロペロなめてくれたから、忘れられなくなっちゃって、あの晩夢を見てしまったの。 夢の中で、この子が、『ボクを連れていって』っていう目で訴えているのよ。急に変更してごめんなさいね」といいながら笑った。
「単に指をなめただけで、何の意図もないと思うのに、人間の方でなんだかんだと理由つけちゃってますけどねぇ〜」笑いながら萌子さんの方を見ながら、ご主人が言う。 「結構そんなもんですよ。それに原宿の町には、この子犬すごく合うわよ。ファッションの町だし、つれて歩いても人目を引くしね」 確かに、ブルーマールという毛並みはとても目立ちそうである。 首まわりは純白のマフラーをしているようで、胴から後ろにかけてところどころにグレーと黒の毛並みが配置され、極めつけは、ブルーアイの瞳だから、注目されそうだ。
それから萌子さんは、ボクを、ガラステーブルの上に立たせて、骨格を調べたり、男の子の「タマタマ」がちゃんと降りてくるかを確認していた。そしてご夫妻に今はまだ赤ちゃんだから「タマタマ」が降りてこないけど、ちゃんと2つここにありますから、時期がくれば2つ降りてきますから大丈夫と説明をしていた。
そして昨日の内に、お医者さんによる健康診断や検便の検査も済んでいること、伝えてから、 「1ヶ月後に必ずワクチンの注射をお医者さんでしてもらって下さいね。その注射で免疫がつきますから、それから外で歩かせてもいいですから」 「じゃあ、11月頃にはお散歩デビューさせられそうね」 二人にとって、一緒にお散歩している光景を思い浮かべただけで笑顔がこぼれた。
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2006年5月26日(金)
No.8
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